2020年度からプログラミング教育が小学校で必修化!先進校の事例に注目が集まる

 文部科学省が公表している次期学習指導要領の中で、2020年度から小学校でプログラミング教育の必修化が明らかになりました。その背景には、AI(人工知能)や、あらゆるものがインターネットにつながるIoTInternet of Things)技術の発達があげられます。IoT技術の発達に伴い、プログラミングのスキルを身につけた人材を必要とする企業が増えているといわれています。

 だからこそ、プログラミング教育は、子どもたちにとって将来的にも役に立つ必要不可欠な教育だといえるでしょう。では、小学校におけるプログラミング教育の導入を前に、教育現場ではどのような準備、取り組みをしているのでしょうか? 今回は、実際にプログラミング教育を小学校で導入している先進校についてご紹介したいと思います。

2014年度からプログラミング教育を導入した京陽小学校

 文部科学省は、既に小学校におけるプログラミング教育の導入方法を示しています。算数や理科などの各教科の授業の中にプログラミングを取り入れるという方針です。重視されることは、実際にプログラミングを体験しながら、意図通りに動作させるために必要な論理的思考力を身につけることです。

 プログラミング教育の先進校として知られているのが、東京都品川区立の京陽小学校です。京陽小は、2014年度から品川区のICT(Information and Communication Technology)活用実践校に指定されています。実際に、プログラミングやICTを活用した授業の研究に取り組んでいます。

 各教室にはプロジェクター、スクリーン、タブレットなどが設置され、デジタル教科書を導入したパソコンも備えているそうです。こうしたICT機器が揃った環境下で、全学年の子どもたちはプログラミングの授業に臨んでいます。

 京陽小学校では、2015年度まで国語や算数など各教科学習の理解を深めるための手段として、プログラミングを活用してきました。2016年度からは、教科の制約をなくした形でプログラミング学習に取り組めるようになりました。

子ども同士の学び合いなどで学習意欲が高まる

 京陽小学校の授業では、主にRaspberry Pi」(ラズベリーパイ)というシングルボードコンピュータを使っています。さらにScratch」(スクラッチ)という子供向けの教育用プログラミング言語を使用しています。では、これらを使った具体的なプログラムの作成方法についてみていきましょう。

 まずは「○○度に向ける」「座標を××ずつ変える」など、日本語で書かれた命令ブロックをメニューから選びます。選んだ命令ブロックを順番に並べるだけでプログラムを作成できるのです。難しいプログラミング言語を覚えなくても取り組めるので、小学生の低学年でも抵抗なく操作できます。

 簡単に身に付けられるプログラミングのスキルに注目した京陽小学校は、「子どもが子どもに教える」という試みを行っています。それは、6年生の市民科(品川区独自の教科)の授業の中で、6年生が1年生とペアを組み、マンツーマンで指導するというものです。

 例えば、6年生が自分で開発した、足し算問題ゲームやキャラクターを動かすアニメーションなどのプログラムを教えていきます。さらに教えるだけではなく、「どのような教え方をすればよいか」といった指導計画も6年生に任せていました。

 一方で、当初は、同じ6年生でもプログラミング能力に差があって、苦手な子どももいたといいます。ですから、教員はプログラミングが苦手な6年生が1年生を指導できるものかと心配していたそうです。実際は、プログラミングの得意な子どもが苦手な子どもにアドバイスするなどの学び合いの行動が徐々に出てきて全員がレベルアップしました。

 このようにプログラミング教育を取り入れることによって、京陽小では、子どもの学習意欲が高まりました。さらに、上級生が下級生に教えるまでに至ったことは大きな成果だったようです。その中で、子ども同士が学び合うようになり切磋琢磨しながら成長していく姿が見られたということです。

ロボットを使ったプログラミング授業など話題を呼ぶ

 京陽小学校に加え、プログラミング教育の先進校として挙げられるのは、東京都の小金井市立前原小学校です。2016年度から、タブレット端末などを積極的に活用したプログラミング教育を積極的に実践しています。

 2017年度には、民間企業や教育機関とともに、プログラミング教育の共同研究を実施しました。具体的には、理科の授業を通じてプログラミングの効果的な活用方法や学習の仕方などを探ったといいます。

 このほか、群馬県草津市内の小学校でも、2017年度からプログラミング教育を積極的に取り入れています。ソフトバンクグループが開発した人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を使ったプログラミング授業です。授業は小学4~6年生を対象に行われ、ロボットを取り入れたプログラミング教育は話題を呼んでいています。また、佐賀県武雄市内の小学校も、2014年度からプログラミングの授業を導入しているそうです。

 以上、プログラミング教育の先進校をご紹介した今回の特集はいかがでしたか?先進校では様々な授業の研究に取り組んでいます。その中では、教育の成果を上げている一方で、さまざまな課題があるといいます。

 それは、事例の少なさ指導する教員の知識経験不足現場教員への負担が増えることなどの課題が考えられています。2020年度からのプログラミング教育の導入に向けて、先進校での事例をどう生かしていくかがカギとなるでしょう。

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